所得税減価償却~転用相続


ここでは、個人の減価償却費の計算のうち、特殊なものに焦点をあて説明します。

 

すこし難しい論点なのですので、前提としている減価償却の知識等ご不明の点があればご連絡ください。


概要

個人の確定申告を行う際、減価償却費の計算だけががよくわからないという声をよく耳にします。

改正も多く、複雑化している現状にあって、個人の確定申告をする場合には、減価償却は強制的に計上しなければならないことから、このようなお悩みが多いのかと思います。

そこでこのコラムでは、特に寄せられる質問の多い

 

 

① 中古資産を購入した場合の減価償却

 

② 家事用資産を転用した場合の減価償却

 

③ 相続、贈与があった場合の減価償却

 

 

について比較しながら解説していきます。

 

具体例

それぞれのcaseの共通の条件を示したのが下記の図です。

case1. 中古資産を取得した場合

【設例】 

  平成25年1月1日に、中古建物を3億円で取得した。

  購入価格:3億円

  築後年数:20年(平成5年1月1日築)

  耐用年数:40年

【答え】 平成25年1月1日における取得価額等は次のようになります。

取得価額300,000,000円
未償却残高300,000,000円
耐用年数24年
償却方法購入時点の償却方法

【解説】

中古資産の場合は新規資産を取得した場合との違いは、

 

「耐用年数だけ」 です。

 

すでに期間が経過している資産であるわけですから新品の資産と同じ耐用年数だと正確な償却とはいえないからです。

中古資産の耐用年数については今後の使用可能期間をもって耐用年数とすることができますが、見積もりが困難なことも多く、次の簡便法が多く使われます。

 

 

【中古の耐用年数算定の簡便法】

 

イ 法定耐用年数の一部を経過した資産

(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20/100

 

ロ 法定耐用年数の全部を経過した資産

法定耐用年数×20/100

 

(注)
1 1年未満の端数は切り捨てた年数とし、その計算した年数が2年未満の場合は2年とします。
2 この場合の経過年数は、新築等されてから取得した時までの期間(取得した時から業務の用に供した日までの期間は含まれません。)になります。

(国税庁HPより引用)

 

 

 

15年耐用する資産を10年経過したあと購入した場合、その資産の残りの耐用期間は5年になりそうな気がしますが、10年をその80%である8年と考えるような算式です。

この例ですと

(15年 - 10年)  +  10年 × 0.2 = 7年 となります。

 

 

 

case1の耐用年数は、24年 になります

( 40年 - 20年 )+ 20年 × 0.2 = 24年

なお、償却方法はこの場合定額法になります。(補足事項1、補足事項2、参照のこと)

 

 

case2.家事用資産を事業用に転用した場合

【設例】 

  平成25年1月1日に、もともと自己の居住用の使用していた建物を賃貸用の建物として貸し出すこととした。 

【答え】 平成25年1月1日における取得価額等は次のようになります。

取得価額600,000,000円
未償却残高416,400,000円
耐用年数40年(24年とすることも可能)
償却方法当初取得日(平成5年1月1日)の償却方法

【解説】

このように今まで家事用に使用していた固定資産を業務用に使用することを用途を変えるという意味で「転用」といいます。

使い方を変えたとはいえ、もともと持っていた資産を継続して保有していることになるため、今後の償却にあっても耐用年数は40年のままです。ただし、納税者の選択により中古の耐用年数によって計算することも可能です。

 

転用の場合注意すべきなのは、未償却残高です。

 

転用の場合の未償却残高は、すでに年月が経過している期間(図中の期間A)を考慮し、取得価額から減価の額を控除することにより計算します。

逆にいうと減価の額は家事の使っていた期間(期間A)中の価値の減少分を示す金額ということになります。

 

この減価の額を計算する際には、次のルールがあります。

①旧定額法に準じて計算する

②耐用年数は本来の耐用年数の1.5倍の年数によること

 

 

では、この設例を使って具体的に計算してみましょう。

 

 

(減価の額の計算算式)

取得価額   × 0.9 ×耐用年数60年に対応する旧定額法の減価償却率 × 経過年数(20年)

600,000,000円 × 0.9 × 0.017 × 20年 = 183,600,000円

 

 

よって未償却残高は、 

600,000,000円(取得価額) - 183,600,000円(減価の額) = 416,400,000円

となります。

 

 

 

  

case3.相続贈与により資産を取得した場合

【設例】 

・平成25年1月1日に父より建物を贈与により取得した。

・父の平成24年分所得税の確定申告書にはこの建物の未償却残高は「330,000,000円」と記載されている。

【答え】 平成25年1月1日における取得価額等は次のようになります。

取得価額600,000,000円
未償却残高330,000,000円
耐用年数40年
償却方法相続・遺贈・贈与時点の償却方法

【解説】 

贈与により取得した場合、取得価額、未償却残高、耐用年数については、原則として、その贈与者の取得価額等を引き継ぐことになります。

ただし、譲渡所得の計算をする上では、相続贈与により取得した資産については取得時期も引き継ぐことになるため混同しがちですが、

減価償却の規定については、相続、遺贈、贈与も、その時点で取得したこととなり

その相続、遺贈、贈与の取得時期の減価償却方法の規定が適用されることとなります。

まとめ

以上をまとめると下記のようになります。

まとめ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

補足事項1

平成10年4月1日以降取得した建物は、定額法(改正後)又は旧定額法で減価償却することが強制されております。

補足事項2

平成19年4月1日以降取得した減価償却資産の償却方法は、改正後の定額法、定率法等になります。
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